京都市女性協会事件(大阪高判平21・7・16) 元嘱託の一般職との賃金差額請求を一審は斥けたが 同一労働同一賃金の原則
女性嘱託職員が、一般職との賃金格差につき同一労働同一賃金の原則等に違反するとして差額賃金を求めた控訴審。大阪高裁は一審同様、同原則を法規範として認める根拠はないと判示。一方、労基法等の基底には同一労働で賃金が均衡を欠く場合は改善する理念があるとしたが、業務の比較可能な一般職員がいないこと等から、同一価値とはいえないとして請求を棄却した。
法規範の根拠を欠く 均衡理念はあるが 比較対象者も不在
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成16年4月から19年3月の間、Yと嘱託職員の雇用契約を締結し、相談係に配属されて、電話や面接による相談対応、その記録・統計処理等の業務に従事していた。Xは、Yの一般職員の労働と同一であるのに、一般職員よりも低い嘱託職員の賃金を支給したことは、憲法13条・14条、労基法3条・4条、同一(価値)労働同一賃金の原則、民法90条に違反し、違法無効であると主張した。
一般職員は8時間勤務、Xは7時間勤務であったため、一般職員の給与規定にあてはめた賃金を8分の7した在職期間3年の給与等と、Xが受給した嘱託給等の差額376万8543円相当の損害を被ったとして、Xは、不法行為に基づき上記差額、慰謝料等を請求して提訴した。一審(京都地判平20・7・9=本紙第2734号)は請求を棄却し、Xは控訴した。
判決のポイント
Xは、賃金処遇が社会的身分による差別であり憲法14条に反し、…低賃金で扱うことにより生きがいを得るという権利を侵害しているから、憲法13条に反し、違法であり不法行為になると主張する。憲法の規定は、国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、…憲法13条・14条に直接反するとの主張は採用できない。…
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