前田道路事件(松山地判平20・7・1) 不正経理の叱責受け自殺、「是正指導」が原因か 行き過ぎた注意が引き金に
道路工事会社の営業所長が自殺したのは、上司からの執拗な叱責によりうつ病を発症・増悪させたためとして、遺族が安全配慮義務違反等に基づく損害賠償を請求した。松山地裁は、上司の叱責は社会通念上許される範疇を超え、死亡との因果関係を認める一方、その発端は所長自身の不正経理であること等を指摘し、過失割合は6割を下らないとして、請求の4割にとどめた。
ノルマ達成を強要 発端理由に6割減
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者甲は、昭和61年4月に前田道路㈱に採用され、平成15年4月東予営業所の所長に就任したが、四国支店の上司から営業成績を上げることを厳しく要求されたため、所長就任間もないころから、達成困難な営業目標を外見上で達成したかのごとく装うため、「出来高の過剰計上」、「原価移動」、「下請業者への支払猶予」など、経理操作を行った。
平成16年7月2日、四国支店に呼び出され、経理操作により生じた1800万円の過剰出来高を解消処理するように指示され、同支店の上司は、「原価移動」や「出来高の過剰計上」の数値を強要する必要がなかったにもかかわらず、12月末までに工事実績を上げることを強要した。同年9月10日、四国支店から工務部長ら3人が来所し、業績検討会が開催され、甲は、工務部長らから、「達成もできない返済計画を作っても業績検討会などにはならない」、「現時点で既に1800万円の過剰計上の操作をしているのに、過剰計上が解消できるのか、解消できる訳がなかろうが」などと、2時間位にわたって罵倒し続けられた。…
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