学校法人実務学園ほか事件(千葉地判平20・5・21) 理事長に給与決定権、年俸制導入し4割減額 成果賃金の具体的基準なし
専門学校の教員が成果主義制度と年俸制導入後に賃金が4割減額したのは、就業規則の不利益変更として差額を請求した。東京地裁は、賃金体系変更の必要性は認容したが、能力給等の具体的な決定基準がなく使用者による賃金の恣意的変更・決定を可能とする規定は相当性を欠くとし、代償措置なども一切ないことなどを指摘し、変更を無効として差額支払いを命じた。
恣意的決定が可能 不利益変更に該当
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
平成15年3月以前に被告N学園に在籍していた原告が、同15年4月に系列法人である被告J学園に転籍し、N学園在籍中の同13年4月以降、就業規則違反または就業規則の不利益変更により大幅な賃金引下げを強行されたと主張した事案である。
原告は、①被告J学園から月額47万1400円の賃金を得る地位にあることの確認、②被告J学園に対し、平成15年4月から同20年2月までの間に原告に対して支払われるべきであった賃金と実際に支払われた賃金との差額、③被告N学園に対し、同13年4月から同15年3月までの間に原告に対して支払われるべきであった賃金と実際に支払われた賃金との差額の支払を求めるとともに、被告らの退職強要等により精神的苦痛を被ったとして、④賃金引下げの強要等の際、被告N学園らの管理職から屈辱的な言辞を投げかけられ、誓約書を作成させられるなど、精神的損害を被ったとして慰謝料の支払いを求めた。
判決のポイント
就業規則に法的規範として関係者に対する拘束力を生じさせるためには、適用を受ける労働者にその内容を周知させる手続が採られていることが絶対的要件と解すべきであるが、労働者代表の意見聴取や労基署長への届出義務は、就業規則の内容を整備させるとともに行政の監督を容易にしようとするものと解されるから、上記拘束力を生じさせるための要件ではないものと解するのが相当である。また、…労働者への周知方法については法定のものに限定されず、実質的に周知されれば足りると解すべきである。…
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