日本アイ・ビー・エム事件(最判平22・7・12) 会社分割に伴う転籍拒否、協議不十分と訴えたが… “労契承継指針”に適う手続 ★
日本IBMの元社員6人が、会社分割に伴う新会社への転籍無効を求めたが、一、二審は棄却したため上告した。最高裁は、承継に必要な「事前協議」(旧商法等改正法附則第5条)や労働者の理解や協力を得る努力義務(承継法第7条)について、協議は数回行われ、多くは同意するなど、労働契約承継の「指針」に適うもので、不十分とはいえないとして上告を棄却した。
理解得る努力した 瑕疵認められない
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被上告人(日本IBM)が、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)に基づき、新設分割の方法により、事業部門の一部につき会社の分割をしたところ、被上告人との労働契約が分割により設立された会社(C社)に承継されるとされた上告人ら(労働者)が、労働契約は、承継手続きに瑕疵があるので承継されず、分割は権利濫用・脱法行為に当たり、労働契約が承継されるとした部分は無効であるなどと主張して、被上告人に対し、労働契約上の地位確認および損害賠償を求めた事案である。
一審(横浜地判平19・5・29=本紙第2666号)、二審(東京高判平20・6・26)ともに、労働者の請求を棄却したため、原告側が最高裁へ上告した。
判決のポイント
会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(承継法)3条所定の場合には労働者はその労働契約の承継に係る分割会社の決定に対して異議を申し出ることができない立場にあるが、5条協議(商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号)附則5条1項に定める労働契約の承継に関する労働者との協議)の趣旨からすると、承継法3条は適正に5条協議が行われ当該労働者の保護が図られていることを当然の前提としているものと解される。…5条協議が全く行われなかったときには、…
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