トヨタ自動車他事件(名古屋地判平20・10・30) 長期出張中にうつ発症、就労先にも安配義務? 信義則から生命健康保護を
自動車部品製造の社員が、1年間出張した工場での過重労働等でうつ病を発症したとして、両社に慰謝料等を請求した。名古屋地裁は、雇用契約のない出張先にも信義則上の安全配慮義務を認めたうえで、労働時間増加や精神的脆弱性等の要因から発症は予見できたほか、社員の業務軽減の申出に対して援助する義務を怠ったとして賠償を命じたが素因により3割減額した。
脆弱性は認識可能 業務軽減の訴えも
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y1は自動車会社、Y2は自動車等の電気・電子部品等の製造・販売の会社である。XはY2の社員だが、まじめかつ几帳面で、断れない性格であった。
Xは、平成11年8月から、エンジンの共同開発のためY1へ長期出張し、そこでは、時間管理等はY2が行っていたものの、業務上の指示は主にY1の社員であるD主担当員から直接・間接になされていた。
Xは、長期出張中の平成12年4月頃うつ病を発症し(第1回うつ発症)、同年10月にY2に復職し、一旦は寛解に至ったが、14年5月からY1およびY2の共同開発プロジェクトに関する業務に従事するようになり(長期出張の形態ではない)、同年7月頃、再びうつ病を発症し休職した(第2回うつ発症)。
Xは、これらうつ病の発症および再発は、Yらの健康上の安全配慮義務違反によるものであるとして、Yらに対し、安全配慮義務違反(債務不履行もしくは不法行為)に基づき、休業損害等の損害賠償を請求した。
判決のポイント
(1)Y1の安全配慮義務の有無…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら