三井記念病院事件(東京地判平22・2・9) 配転や業務命令拒み諭旨解雇、パワハラで不当か 懲戒事由あるが合理性欠く
「特養」の副施設長が、配転・降格を拒むなど業務命令違反を理由に諭旨解雇されたため、地位確認を求めた。東京地裁は、降格命令について、業務内容は同一で賃金減額は不当と判示。業務命令に従わず、上司を批判する上申書を出したことは、諭旨解雇事由に当たるが、背景に業務方針の対立があり、解雇という形で一方に責任を負わせるのは相当でないとして無効とした。
方針対立が背景に 一方の責任でない
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告Xは、看護師、社会福祉士、介護支援専門員等の資格を有し、被告社会福祉法人Yの特別養護老人ホームの介護長として勤務していたところ、平成18年1月、Yの体制が介護・相談系列と、医療・看護系列の2部門に組織編成され、Xは介護・相談系列の副施設長になった。18年10月、Yは組織の2部門化が効果を上げていないとして、再度4部門に編成替えし、副施設長を廃止し、教育研修センター長に配転する旨をXに内示した。Xはこれに反発し、訴外労組に加入して配転の撤回等を要求した。
Yは、改めて特命事項として右業務への従事をXに通知し、12月1日付で教育研修センターへの配転を命じた。同センターには他の職員がいなかった。Xは、争う権利を留保して異動に応じた。
Yは、19年2月にXを教育研修センター長から解任し、同センター職員とした。これによりXの給与月額約50万円は約3万円減額された。その後、Xは、病院長やY代表理事宛に、A施設長らを批判し、不当に降格されたなどの主張を記載した「上申書」を提出した。
Yは、19年4月、業務命令違反を理由としてXを諭旨解雇とし、Xが退職願を提出しなかったため、Xを懲戒解雇した。…
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