日本美術刀剣保存協会事件(東京地判平20・5・20) 70歳定年の事務局長を68歳で採用、2年後解職 短期契約の合意はなく無効 ★
事務局長を70歳定年と規定する財団法人に68歳で雇用されたが、2年後に定年退職を通知されたことにつき、慣行等を理由に地位確認等を求めた。東京地裁は、採用時に契約期間の確認や事務局長就任時に任期の確認がないこと、前任者が78歳まで勤務していること等から、定年制の適用は厳格でなかったと判示。雇止めでなく恣意的な解雇に当たると請求を認容した。
任期確認を行わず 制度の適用は除外
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、美術刀剣類および刀装・刀装具を審査し、保存・特別保存刀剣の鑑定および重要・特別重要刀剣の指定を行い、その台帳、重要・特別重要刀剣の図譜を作成し、資料として整備している財団法人である。原告甲野は、被告と雇用契約を締結して、平成16年5月11日より被告に勤務し、事務局長を務めてきた。
平成18年5月から8月にかけて、原告甲野はB専務理事と共に数回文化庁を訪れ、担当官から指導を受けた。原告甲野は、上記指導に従う方向で、被告の刀剣審査規程に上記指導を盛り込む形で改正作業を進めたが、B専務理事は文化庁の指導に承服せず、同庁へ出頭することを渋るようになった。理事会でもB専務理事に同調する者が多く、同年7月25日の理事会では原告甲野の提出した議案は成立しなかった。
しかし文化庁からは上記指導内容の徹底や被告内の関係者の処分までが求められたため、B専務理事はこれに従わないことに意思を固めた。他方、原告甲野は同庁の求める方向の報告書案を作成したため、B専務理事との意見の対立が鮮明となった。
平成18年8月14日、丁原理事は、「緊急理事会」の終了後、原告乙山(会計課長)および同丙川(管理・庶務課長)に対し、自らが会長になり、原告甲野は文化庁に勝手に協会文書を提出したので「解職」したと述べた。さらに、原告乙山および同丙川に対し、「緊急理事会」の開催の手続きの正当性に異議を唱え非協力であったことを理由に、1カ月の自宅待機の後解職とする旨を告げた。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら