東京都自動車整備振興会事件(東京高判平21・11・18) 再雇用制導入に伴う嘱託期間途中の雇止めは不当か 事業の運営上やむを得ない
自動車整備事業を行う公益法人の嘱託の専任講師が、再雇用制度導入に伴い期間途中で雇止めされたため、解雇権濫用と訴えた。一審は解雇に相当性がないとしたが、東京高裁は、再雇用後の賃金減額は法定事業の減収からやむを得ず、事業運営上の事情があれば解雇可能とする規定を踏まえ、再雇用契約の締結を前提に雇止めしたもので合理性を欠くとは認め難いとした。
就業規則にも規定 賃金減額も合理的
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、控訴人(社団法人東京都自動車整備振興会)に雇用されていた被控訴人が、控訴人から雇用の終了を通知されたため、雇用契約上の地位の確認および未払い賃金相当額の支払いを求めた事案である。
(1)被控訴人(昭和22年生まれ)は、口頭弁論終結時現在61歳である。被控訴人は、平成2年1月1日付で、控訴人との間で、「嘱託雇用契約書」により雇用契約を締結し、職名は専任講師として採用され、これまで上記契約を更新してきた。
(2)控訴人は被控訴人に対し、平成19年9月21日、同年10月27日で満60歳に達し雇用契約が終了する旨の通知書を交付した。同部長は、同時に、再雇用嘱託契約書を提示した。
(3)控訴人はこの行為について、以下のとおりその正当性を主張した。
本件雇用契約書の「退職および解雇」には、「甲(控訴人)の事業運営上やむを得ない時」に該当する場合には、契約期間内においても期間を短縮することができるとされている。平成18年4月からの改正高年齢者雇用安定法の施行(高年齢者雇用確保措置)を控え、控訴人には、60歳以降の処遇に関する制度整備が求められていた。ところが、労働組合であるAおよび同人所属の分会は、制度整備に非協力的であるため、被控訴人が60歳に達するまでに制度整備が間に合わず、いつ整備できるか予測不能の状態であった。…
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