みずほトラストシステムズ事件(東京高判平20・7・1) 入社半年のSEがうつ病自殺し遺族が賠償請求 心の脆弱性は認識し得ない
新卒SEが入社半年でうつ病自殺したのは、研修が不十分にもかかわらず専門部署へ配属したためとして、遺族が安全配慮義務違反等から損害賠償請求したが、棄却されたため控訴した。東京高裁は、一審同様に客観的にみて業務過重とはいえず、発症増悪の原因は「心の脆弱性」にあり、入社後の言動から会社は認識し得なかったとして、因果関係を否定して請求を斥けた。
業務過重といえず 原審踏襲して棄却
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、コンピューターのシステムおよびプログラムの開発販売等を業とする株式会社である。Y社は、コンピューターの経験の有無を問うことなく社員募集をし、平成8年4月、Aはシステムエンジニアとして入社した。Aは、コンピューターの経験がなかった。
Y社は前年まで、入社後3カ月の集合研修を行っていたが、新人のAは入社後、約1カ月半の集合研修、約1カ月の配属部内研修を受け、信託業務に関するプログラムを作成する部門に配属になり、配属部内研修後(6月末)、日銀与信明細票プログラムの保守等の業務を指示された。保守業務の期限は余裕を持って設定されていたが、Aは5日遅れで完成した(8月14日)。その翌日、Aは体調不良のため休暇を取得した。
Aは、8月中旬には余り食事をとらなくなり、下旬には仕事を辞めようかとの発言もするようになった。
Aの労働時間は、出社が午前8時30分前であり、退社は、7月上旬から8月上旬にかけては午後9時頃も多かったが、8月16日以降は他の新入社員に比して特に遅くはなかった。
8月29日、Aは昼食後に吐き気を訴え、Y社の診察室で問診を受け、帰宅後に訴外病院の夜間救急外来を受診した。…
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