明石書店事件(東京地判平21・12・21) 有期契約に不更新条項、正社員登用ムリならクビ!? 更新の可能性排除し不合理
出版社の契約社員が、口頭での契約更新に合意しており雇止めは無効として労働契約上の地位確認などを求めた。東京地裁は、契約社員の扱いを正社員登用か1年後の雇止めを更新の条件とする不更新条項の追加に限ったことについて、登用の基準は明らかでなく、反復更新を避けるという会社方針は不合理であることなどから契約の継続が期待されるとして請求を認めた。
継続期待ある業務 従前内容で合意済
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、書籍の出版等を目的とする株式会社である。Xは、平成19年6月18日、Yとの間で、期間を同日から同年12月31日まで、賃金を月額23万円と定めて労働契約を締結した。入社前、B常務から、問題がなければ契約は更新されるという趣旨の説明を受けた。なお、就業規則上、正社員と契約社員の扱いの違いは明確でなかった。
XとYは、平成19年12月28日、期間を同20年1月から同年12月31日、賃金を月額24万円と定めて(月額1万円の昇給)、更新の合意をした。Xの仕事の内容は、正社員である編集者と異なるところがなかった。
Yの人事制度は、入社時に全採用者との間で有期労働契約を締結して、数年後にその中から正社員を登用するものである。
平成20年7月、契約社員の労働条件の向上を目的として労働組合東京ユニオン明石書店支部が結成された。
本件組合支部は、同年11月26日の団体交渉において、①本件契約の更新、②正社員登用制度などの検討を要求することを予告した。Xは、11月27日、Yから契約更新のことで呼び出され、YのA常務が、本件契約を同じ内容で更新する旨の提案をしたのに対し、Xは、承諾した。ところが、Yは、12月2日の団体交渉が終わりかけたころ、①現行の労働条件を変更せず、期間を1年間と定めて更新する、②今回の契約期間満了をもって終了する(不更新予定条項の追加の通告)などの記載のある書面を組合側に交付した。…
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