日本ニューホランド事件(札幌地判平22・3・30) 再雇用制度導入に反対した労組委員長のみ適用拒否 賃金の合意なく契約不成立
再雇用制度による55歳以降の賃金減額に反対し、裁判で勝訴した少数組合の委員長が、定年到達後の再雇用を拒否された事案。札幌地裁は、再雇用拒否は無効としつつも、賃金額が合意されていないため契約は成立していないとし、地位確認・賃金請求等は棄却したものの、長年対立した委員長に対して不利益を与える目的だったと推認し、550万円の損害賠償を認めた。
不利益与える目的 損害賠償支払いを
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y社の従業員組合は、平成9年、Xを中央執行委員長とする少数派組合(対立路線)と多数派組合(労使協調路線)とに分裂した。少数派組合は再雇用制度の55歳以降の賃金減額に反対し、裁判に訴えて請求が認容された(以下、前訴)。
Xは、平成20年9月に60歳定年を迎え再雇用を希望したが、Yは、①少数派組合およびXは、再雇用制度に反対している、②再雇用制度に関する前訴で、裁判所は少数派組合およびXには適用されない旨判示している、③仮に、Xに再雇用制度が適用されるとしても、再雇用の判断基準のいずれにも該当しない、として拒否した。
Xは、一次的請求として、再雇用拒否は、Xに報復するために行ったものであり、権利の濫用または不当労働行為に該当し無効で、当然に再雇用契約が成立するとして、雇用契約上の地位確認と賃金支払いを求めた。
また、二次的請求として、仮に再雇用契約の成立が認められないとしても、再雇用拒否は、債務不履行または不法行為に該当するとして、損害賠償(逸失利益)、慰謝料、弁護士費用等を請求した。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら