松下プラズマディスプレイ事件(大阪地判平19・4・26) 出向社員が指揮命令、派遣先と雇用契約成立か 賃金支払いの有無で判断を ★
PDPパネルを製造する下請会社の社員が、偽装請負を疑い、直接雇用を求めたものの、他部門へ移るように打診され退職に追い込まれたとして、未払い賃金などを請求した。大阪地裁は、派遣先からの賃金支払いはなく、派遣元と一体と認める証拠がないことなどから、黙示の雇用契約成立を否定。直接雇用の申込義務を怠っても、直ちに法的な効力は生じないと判示した。
偽装請負濃厚だが 直接雇用申込ない
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
被告は、PDPパネルの製造等を行っている会社で、訴外A社(パスコ)と業務請負契約を締結していた。原告は、訴外A社に雇用され、平成16年1月20日から被告の本社工場で働き始めた。被告での業務実態について、偽装請負が疑われる状況にある等を理由に、原告および加入する労働組合は平成17年4月頃から被告に対し直接雇用を求め、交渉を行った。また原告は大阪労働局に対し、本社工場における勤務実態はA社による労働者派遣である等として是正申告を行い、同労働局は調査を行った。これを受けて被告は請負契約を派遣契約に切り替え、同年7月20日限りでA社との業務請負契約を解消することとした。A社は原告に対し他部門に移るように打診したが、これを断ったため原告は同日限りでA社を退職することとなった。
同年8月19日、原告は業務内容を従前と異なるリペア作業等とし、契約期間を平成18年1月31日とする期間工としての雇用契約書に、被告の提示した条件について異議をとどめる旨を通知したうえで、署名押印した。
被告は平成17年12月28日、翌年1月31日の満了をもって雇用契約が終了する旨通知し、同日以後、就労を拒否した。原告は地位確認、未払い賃金請求、リペア作業に従事する義務の不存在確認、不法行為による慰謝料請求を求めて提訴した。…
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