トータルサービス事件(東京地判平20・11・18) FC式の補修事業、元社員が類似業務を開業… 独自技術で競業避止に違反 ★
米国企業と車両塗装修復の独占実施を契約し、フランチャイズ加盟店のみに技術指導を行う会社が、類似事業を開業した元社員に対し損害賠償等を求めた。東京地裁は、補修技術は独自性を有し保護性が高く、習得に際し米国研修を受けさせていること、独立支援制度等の代償措置もあることから競業避止義務違反を認め、違約金などの7割を損害額とし、2年間の競業差し止めを命じた。
習得に米国へ派遣 活動2年間差止め
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X社は、米国籍会社と車両外装のリペア事業(外装のへこみや塗装のはがれなどを修復する事業)に関する日本国内での独占的実施契約を締結し、また他の米国籍会社と車両内装や家具のリペア事業に関する国内独占的実施契約を締結し、フランチャイズ化して加盟店募集・指導業務を行っている会社である。
Yは平成2年6月にX社に入社し、技術習得のために会社の費用で米国研修を受講し、同8年4月から同14年11月まで、インストラクターとして加盟店への技術指導・車両関係事業の直営施工を担当していたが、同15年9月に一身上の都合を理由に退職、同年12月にX社の類似事業を開業し、X社の顧客とも取引するようになった。
X社の就業規則には退職後の守秘義務の規定があり、またYは退職時に、機密保持の確認・競業避止義務の確認・損害賠償の約定を記載した機密保持誓約書に署名押印し提出している。同誓約書では「貴社のフランチャイジー、代理店等として開業する場合を除き、同じ商品を取り扱い又は取り扱う予定がある事業を無断で自ら開業、設立すること」等を禁止している。
X社は、Yの行為は機密保持契約に基づく競業避止義務違反として、損害賠償の支払いおよび競業の差止めを求めた。…
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