兵庫県・兵庫県労委(住友ゴム工業)事件(神戸地判平20・12・10) 退職後に顕在化した石綿問題、団交義務あるか 在職中の事項で応じるべき ★
2009.06.15
【判決日:2008.12.10】
タイヤ製造会社の退職者ら3人が、石綿被害救済に関する団交を拒否され不当労働行為として労委に救済を申し立てたが、労組法の対象外として却下されたため取消しを求めた。神戸地裁は、在職中の事実に起因した安全配慮義務違反を巡る紛争に関するもので、被害の顕在化時点で退職していても、未精算の労働契約があり「雇用労働者」と解して応諾義務を負うとした。
労働契約は未精算 労委の判断を覆す
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
労働組合Xは、タイヤ製造業である参加人会社の元従業員であるA、Bおよび死亡した元従業員C1の妻C2の計3人が加入し、結成した地域ユニオンおよび個人で組織する労働組合の分会である。
Aは約39年間勤務の後に平成9年に、Bは約40年間勤務の後に平成12年に、それぞれ参加人を退社した元従業員である。またC1は約45年間勤務の平成2年に参加人を退社したが、悪性中皮種に罹患し平成12年1月に死亡した。
平成18年10月、Xは参加人会社に分会結成の通知とともに、①石綿使用の実態を明らかにすること、②石綿曝露の可能性がある職場で就業していた退職者に対して、健康管理手帳が交付されることを知らせるとともに、退職労働者全員の健康診断を行うこと、③定年退職後に労災認定された者への企業補償制度を設けること――を団交事項とする団体交渉の開催を申し入れたが、参加人会社はこれを拒否した。…
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平成21年6月15日第2733号14面 掲載