広島セクハラ(生命保険会社)事件(広島地判平19・3・13) 外交員の忘年会でセクハラ、原告らにも過失? 行為煽ったとして2割減額
忘年会で男性上司3人が性的嫌がらせを行ったとして、保険会社の女性外交員7人が不法行為による損害賠償を請求した事案。広島地裁は、行為の違法性と使用者責任を認めつつも、席上で嬌声を上げるなど行為を煽ったと推認し、慰謝料の2割減額を相当と判示。なお、会社の事後対応に配慮義務違反はないとして、債務不履行の主張を斥けた。
嬌声を上げて騒ぐ 使用者責任は認容
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xら7人はY社の従業員で、Xらの上司Y2~4(以下y3人という)は、平成13年12月の忘年会の席でXらに対し、抱きつく、肩を抱きよせる、足で体を挟む、押し倒して顔を舐める、抱きついた状況を無理に写真に撮らせるなどといったセクハラ行為をした。ただし、Xらも嬌声を上げて騒ぎ立て、中にはY2を押し倒して乗りかかるなどした者もあった。Y社は翌年の3月29日にXらから申し出を受け、5月9日から調査に着手、その後、加害者に謝罪させ、会社としての謝罪や、Y2の更迭、y3人の懲戒処分を行った。
Xらは、本件セクハラについて、y3人には民法709条(不法行為)に基づき、またY社については民法715条(使用者責任)に基づき損害賠償を請求した。さらに、Y社に対しては、Xらからの訴えに対する対応が不誠実として、雇用契約上の債務不履行を理由とする損害賠償も請求した。損害賠償請求の内訳は慰謝料のほか、カウンセリング費用や治療費、逸失利益(労働意欲の低下に起因する営業成績不振による収入減)である。…
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