ボーダフォン(ジェイフォン)事件(名古屋地判平19・1・24) 自殺社員のうつ病罹患気付かず、会社に責任は 異常言動なく予見は不可能
経験のない物流部門へ異動になり心理的負荷などが増加した結果、うつ病が悪化し自殺したとして安全配慮義務違反を訴えた。名古屋地裁は、異動の説得経緯と症状増悪に因果関係はあるが、会社がうつ病の罹患を認識可能でなければ異動後の症状悪化は予見できないと判示。異常言動や通院歴の報告がない以上、精神疾患の罹患について調査義務はないと請求を棄却した。
因果関係はあるが 診療歴の報告なし
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
訴外会社に長年勤務してきたKは、平成6年、被告(㈱東海デジタルホン。その後、ジェイフォン㈱を経て、ボーダフォン㈱に商号変更)に在籍出向となり、平成13年4月に被告に転籍となった。被告への出向当初、営業本部カスタマーサービス部サービス課に担当課長の一人として配属された。その後、故障受付センター、本社保守センターの各担当課長等を歴任した。
平成14年9月頃、被告は佐屋保守センターの退職者2人の後任としてKが適任と判断し、Kにこの人事異動(本件異動)について打診したが、同人は未経験の物流業務であること、1人で2人分の業務はできないこと、従前の業務も担当し負担が重くなること、通勤時間が長くなることなどから、上記異動を拒絶した。上司らは、業務量が減少予定であることなどを説明して説得したが、Kは納得せず、同年11月頃、「自分を辞めさせたいのか」と発言し、上司らも「勝手にしたらいいではないですか」、「Kさん、甘えているんじゃないの」などと述べるなどした。しかし、最終的にKは、同年12月2日から、佐屋保守センターに勤務したが、同月7日、自宅で自殺した。…
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