JFEシステムズ事件(東京地判平20・12・8) うつ病休職し復職後に自殺、出向元・先の責任は 出向先のみに安全配慮義務
大手自動車工場の生産管理システムを開発中に出向先でうつ病により入院し、復職した後に自殺した夫について、遺族らが出向元・先に対し安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した。東京地裁は、心理的負荷を認識し罹患を予見可能だった出向先のみに安全配慮義務違反を認めた一方、病状等の把握機会を設けており、本人の「回復傾向にある」等の発言を考慮して3割を過失相殺した。
本人の過失は3割 適正な報告を怠る
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者Aは、昭和63年7月21日、JFEスチール㈱(以下J社)の前身、川崎製鉄㈱に入社し、平成11年からは、出向先の会社(JFEシステムズ㈱=以下S社)において、トヨタ自動車㈱の試作品工場向けの生産計画管理システム開発のプロジェクトマネージャーに就任し、システム開発を担当した。
システム開発は、当初平成12年7月5日の稼働開始を予定していたが、不具合が発生したため稼働予定日は同13年3月26日まで4回にわたり変更された。
Aは、同12年6月6日以降、本件システム開発に専念したが、愛知県豊田市への出張などもあって体調を崩し、同年11月23日に本件システム開発のプロジェクトマネージャーの職を外れ、翌年1月5日から2月8日まで国立精神・神経センターX病院精神科に医療保護入院し、その後5月6日まで自宅で療養した後、同月7日に復職したが、8月20日、自宅で自殺を図り、死亡した。千葉労働基準監督署は、Aの自殺について労災認定を行った。
Aの遺族甲は、次のように主張して、J、S両社の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求して、本件訴えを提起した。…
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