第一交通産業事件(大阪高判平19・10・26) 子会社廃業で系列会社に雇用義務認めた判断は 偽装解散 親会社こそ責任を負う
タクシー会社の解散に伴い、営業地域の承継先が雇用契約上の責任を負うとした原審を不服として、原・被告双方が控訴した。大阪高裁は、子会社を実質的に支配したのは親会社で、労組排斥が目的の偽装解散であり、一審で否定した親会社への雇用契約上の責任追及は法人格濫用の要件を満たせば可能とし、逆に営業地域承継先にまで同法理を適用する必要性はないとした。
実質的な支配下に 一審の判決を覆す
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
本件第1事件は、タクシー事業を営むA株式会社の従業員であった原告らが、Aの解散およびそれを理由とする原告組合員らの解雇は、同社の親会社である被告Yが原告組合を壊滅させる目的で行った不当労働行為であるなどと主張し、被告Yに対し主位的に、法人格否認の法理に基づき労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払い賃金の支払いを求め、予備的に不法行為に基づき賃金相当損害金の支払いを求め、原告らが上記解雇によって被った精神的苦痛等について、被告Yおよびその代表取締役である被告B1、同B2に対し不法行為に基づく損害賠償を求め、反訴として被告Yが、原告らに対し不法行為に基づく損害賠償債務がないことの確認等を求めた。
本件第2事件は、A社の解散を理由に解雇された原告らが、Aと同じ営業区域においてタクシー事業を営む被告Zは、被告Yの指示の下、Aの事業を承継したものなどと主張して、法人格否認の法理に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払い賃金の支払いを求めた事案で、(両件併合後の)控訴審である。…
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