ゴムノイナキ事件(大阪地判平19・6・15) 会社都合扱いの要求に対し義務不存在の確認へ 勧奨後の退職で処理に誤り
業務態度を改めない従業員に退職を勧め、退職願受理後、自己都合扱いとしたところ、会社都合による退職金の支払い等を要求されたため、支払い義務不存在の確認を求め、また退職者も反訴した。大阪地裁は、退職強要ではないとしつつも、暗に解雇の可能性をほのめかし退職を促した結果で会社都合にあたると判示、自己都合退職とした事務手続きの過失を理由に退職者の請求を認容した。
“強要”ではないが 自発的といい難い
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
ゴムノイナキ株式会社は、各種ゴム製品および合成樹脂製品の製造販売を主な業務とする会社である。
労働者甲は昭和61年11月に会社に雇用され、平成13年4月当時は大阪営業所勤務で、生産管理部門において取引先(得意先・仕入先)への商品の受発注、入出庫の管理等の業務に従事していたが、納期の遅れや顧客への態度など、多くのクレームが寄せられ、上司が再三注意・指導したものの改善されないことから、退職を含め身の振り方にも言及する事態となり、同年4月27日、一身上の都合を理由として同年7月31日をもって退職する旨の退職願を提出した。
同年5月中旬には甲の退職は承諾され、自己都合退職として処理されたが、甲は、退職強要による会社都合としての退職金と、自己都合退職扱いによって短縮された雇用保険法に基づく基本手当支給期間分の補填を求めた。
これに対して会社は、甲の退職は自発的な自己都合退職であり、その処理に誤りはなかったとして、甲にこれらを支払う義務がないことの確認を求める本訴を提起したところ、甲が不法行為に基づく損害賠償請求として、上記退職金差額と基本手当差額の支払いを求めて反訴を提起した。…
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