東京エムケイ事件(東京地裁平20・9・30) 労災後遺症で免許喪失、タクシー運転手を解雇 特定の業務不可なら配転を
タクシー乗務員が、業務中の交通事故による後遺症が原因で普通自動車第二種免許を喪失したこと等を理由に解雇されたため、雇用契約上の地位確認等を求めた。東京地裁は、二種免許は格別高度の専門性を有するものではなく、事業規模から他の職種の提供も困難でないこと等から、特定の業務ができなくなっても配置転換できるし、解雇は無効と判示した。
専門的資格でない 他職種の提供可能
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、一般乗用旅客自動車運送事業等を目的とするタクシー会社で、Xは、平成13年11月5日にYに採用されたが、労働契約書には業務内容をタクシー運転手と記載されていた。
Xは、16年11月10日、タクシー運転業務中に追突され、翌日から休業し、17年9月29日に復職した。しかし、この事故で外傷性頭頚部症候群により復職後も就労に困難が生じ、自賠責保険の後遺障害等級14級10号と認定された。また、18年5月以降、Xは深視力検査に複数回不合格となり、その結果、二種免許を喪失した。
Yは、Xに対し、①二種免許を失い、タクシー運転手としての業務に耐えないこと、②①の事由によりYから配転に応ずるよう求めたが就労の意思がみられないことを理由として、同年6月30日をもって解雇するとの解雇通知書を5月31日付で発した(本件第1次解雇)。
Xは、同年11月ころ、東京地裁に第1次解雇について地位保全の仮処分を申し立て、19年3月、賃金の仮払いを認容する決定が出された。
この決定を受けて、Yは社屋内の清掃員として就労することをXに提案し、Xは就労を開始したが、Yに対し外商部などへの配転を求めるようになり、Yはタクシーの洗車およびマットの清掃業務を命じたが、Xは、業務が過酷であるとして就労を拒否、出社しなくなった。
Yは、Xに対し就労に関する話合いを求めたがXが応じないため、Yは、就業規則第66条(「正当な理由がなく無断欠勤、職場放棄が14日間に及んだとき」)および第67条(懲戒解雇)に基づき、平成20年2月13日をもってXを懲戒解雇した(第2次解雇)。…
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