第一交通産業事件(大阪地裁堺支判平18・5・31) 子会社解散で解雇、系列別会社に地位確認請求 営業地域承継先が雇用義務
タクシー会社の解散で解雇された組合員らが、法人格否認の法理を基に、親会社や系列の別会社に雇用継続や未払い賃金の支払いを求めた。大阪地裁堺支部は、親子会社間で資産運用の混同はなく法人格の形骸化には当たらないが、新賃金制度に反対する労組排斥が目的で法人格の濫用と認定、労働契約上の責任は、親会社にはなく営業地域を承継した系列の別会社が負うと判示した。
目的は「組合排斥」 法人格濫用に該当
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
本件第1事件は、タクシー事業を営むA株式会社の従業員であった原告らが、A社の解散およびそれを理由とする原告組合員らの解雇は、同社の親会社である被告Yが原告組合を壊滅させる目的で行った不当労働行為であるなどと主張して、被告Yに対し、主位的に、法人格否認の法理に基づき労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払い賃金の支払いを求め、予備的に、不法行為に基づき賃金相当損害金の支払いを求めるとともに、原告らが、上記解雇によって被った精神的苦痛等について、被告Yおよびその代表取締役である被告B1、被告B2に対し、不法行為に基づく損害賠償を求め、反訴として被告Yが、原告らに対し、不法行為に基づく損害賠償債務がないことの確認等を求めた事案である。
本件第2事件は、A社の解散を理由に解雇された原告らが、A社と同じ営業区域においてタクシー事業を営む同一グループの被告Zに対し、被告Yの指示の下、A社の事業を承継したものであるなどと主張して、法人格否認の法理に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払い賃金の支払いを求めた事案である。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら