加西市(懲戒免職)事件(神戸地判平20・10・8) 地方公務員が休日の酒気帯び運転で懲戒免職に 「公正原則」に抵触して違法
兵庫県の市職員が、休日の酒気帯び運転を理由に受けた懲戒免職の取消しを求めた。神戸地裁は、処分は非違行為の態様・影響等を考慮して裁量により決定できるが、アルコール濃度は、道交法違反の最下限にすぎず、事故も発生していないことを鑑みると、免職により被る損害は甚大で、処分は社会通念上著しく妥当を欠いて苛酷であり、公正原則に抵触し違法と判示した。
妥当を欠いて苛酷 甚大な損害を被る
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
XはY市の建設経済部の課長として勤務していた者であり、本件当時56歳であった。
平成19年5月6日(日)、町内会の草刈りの後、Xは町内会役員から誘われて焼き肉店で昼食をとり、その際、ビールを中ジョッキ1杯、日本酒1合を飲んだ。Xは、30~40分程度雑談をし、帰宅しようと自家用車を運転して約400メートル進んだところでパトカーに検挙され、呼気1リットル中から0.15ミリグラムのアルコールが検出された。なお、Xに道交法違反の前科・前歴はなく、ゴールド免許保持者であり、本件の行政処分は免許停止30日、刑事処分は罰金20万円の略式命令であった。
Xは、翌7日にY市に本件を申告し、Y市は、同月9日懲戒審査委員会を開催し、11日、Xを懲戒免職処分とした。Y市の懲戒処分の指針では、以前は、事故を伴わない飲酒運転の標準は「免職・停職」とされていたが、平成18年9月の改正により、飲酒運転の場合の処分は「免職」のみとなっていた。…
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