都市開発エキスパート事件(横浜地判平19・9・27) 組合未加入を理由に「賃金減額」協約の無効主張 出向元が“一の工場事業場”
労働組合への未加入を理由に、賃金減額について締結した労働協約の適用を否定し、未払い賃金を定年退職後に請求した事案。横浜地裁は、出向先の各事務所には独立性がなく、労働協約の一般的拘束力が及ぶ「一の工場事業場」を、賃金支払い義務を負っていた出向元本社と認定、請求を棄却した。賃金減額にも一定の合理性があるとした。
一般的拘束力及ぶ 「先」に独立性なし
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、主に都市整備公団(後の都市再生機構)から工事監理業務等を請け負う㈱都市開発技術サービス(TGS)の子会社として設立された株式会社で、土木・建築および造園工事等の設計・施工等の業務に関する請負・受委託を主な業務としている。本社以外には支店、営業所等はなく、TGSとの間で出向協約を締結し、平成18年3月末現在で在籍役員・従業員50人のうち4人を除いてほぼ全員がTGSに出向している。出向協約によれば、出向者の給与は被告の基準に基づき支給するものとされ、被告本社においては賃金の支払い・事務等と、出向させるための事務も行っていた。
原告は昭和58年5月、TGSに入社し、被告に出向中の平成13年7月に他のTGS社員8人とともに被告に転籍となり、原告を含む転籍従業員全員がTGSの運営する工事事務所に出向し、工事監理業務等を行った。
しかし転籍受入直後より、被告は転籍従業員の賃金を一方的に減額したため、原告を除く転籍従業員は労働組合を結成し、…
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