ショウ・コーポレーション事件(東京高判平20・12・25) 教習所廃止で解雇、新設校が労働契約を承継か 移籍の示唆は雇用申込みに
自動車教習所の閉鎖で解雇された労組役員3人が、同時期に新設されたグループ内の教習所への営業譲渡による労働契約承継を主張し、地位確認等を求めた。東京高裁は一審同様、用地を他社から取得したこと等から営業譲渡を否定したが、両社は人材の異動等で協力関係にあり、共通の代表者による「全員移籍」の発言を、労働契約締結の申込みと認めて契約成立とした。
両会社は協力関係 営業譲渡でないが
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告(本件控訴人、以下同)と訴外会社はいずれも自動車の運転教習業等を目的とする会社で、訴外会社は湘南校(自動車教習所)を経営していた。
原告(本件被控訴人、以下同)らは、訴外会社に雇用され、A組合に所属していた。被告の代表取締役は乙山太郎とDで、取締役には太郎の子どもの次郎、花子らが、訴外会社の代表取締役は次郎で、取締役には太郎、花子らが就任していた。また被告および訴外会社を含むグループ会社は、いずれも太郎および次郎が取締役に就任していた。
平成15年5月頃、太郎とDは他社が自動車教習所として使用していた土地建物を購入し、それを使用して被告が自動車教習所(秦野校)を開校することを決定した。これに伴い訴外会社は、秦野校に、従業員・指導員らを出向等させるとともに、A組合との団体交渉においても、次郎らが、将来的に湘南校を閉鎖した場合には、湘南校の従業員は全員秦野校に移ってもらう等と述べた(以下「本件発言」)。
しかし、平成16年3月、次郎は、秦野校へ湘南校の従業員を全員異動させるといったことはないと本件発言を翻したが、他方で訴外会社は、被告と連絡を取り合い、湘南校で不要となった物品を順次秦野校へ移動させていた。…
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