ホテル日航大阪(脳出血)事件(神戸地判平20・4・10) 脳出血で障害1級に、過重業務原因と賠償請求 配慮義務違反だが4割減額
ホテルの営業部課長が、脳出血を発症し後遺症を残したのは、過重な業務が原因として、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求した。神戸地裁は、不慣れな業務を実質1人で行い残業が月200時間弱に及ぶ等、内容・時間両面で過重となり症状を増悪させたとしたが、健診で高血圧・糖尿病等を指摘されながら医療機関を受診しなかったことから損害の4割を減額した。
「自己管理」怠った 生活習慣病を放置
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
X1は、昭和29年2月生まれで、昭和57年にYに入社した。Yはホテルの運営等を目的とする株式会社である。
X1は、平成14年4月から、Yが運営するホテルの営業部販売グループ課長として、主として修学旅行生の受け入れ業務に従事していた。X1は、宿泊担当業務の経験は豊富だったが修学旅行業務の経験はなく、その他の営業部員の中にも経験者はいなかった。同年10月からは同業務の経験がないIとともにX1が中心となって業務を遂行していた。
平成14年2月にX1が受けた健康診断(成人病検診)の結果は、血圧については治療を要することを意味するE判定、総合でもE判定で、肝機能異常、血圧については要受診の指摘を受けていた。しかし、X1は、本件発症前の5年間において、高血圧症等について、自ら医療機関に赴き診察を受けたことはなかった。
修学旅行業務の繁忙期は春と秋で、X1の所定外労働時間は、平成14年10月198時間25分、11月129時間10分、12月(3週間)およそ55時間25分であった。X1は、10月頃から、同僚や上司の目にも明らかな程に疲労していた。
X1は、平成14年12月22日から翌年1月4日まで、2日を除いて公休であったが、同年1月4日に風俗店で高血圧性脳出血を発症して倒れ、同16年9月30日、運動性失語障害および右半身(上下肢)に高度の麻痺を残して症状固定となり、同19年9月13日に要介護3の認定を受けた。…
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