H工務店事件(大阪高裁平20・7・30) 一人親方が転落、元請に安配義務なしの判断は 請負的でも使用従属関係に
工務店から住宅建築を請け負った大工歴30年の一人親方が、転落事故で負傷し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めたが、個人事業主であることを理由に棄却されたため控訴した。大阪高裁は請負契約の色彩が強いものの、元請が管理する現場で指示・命令に従ったこと等、実質的な使用従属関係にあったと判示したが、落下には道具選択と技量に誤りがあり8割を過失相殺した。
指揮・命令に従う 本人の過失が8割
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
控訴人Xは昭和26年生まれの男性で、高校卒業後、1級建築士の資格を取得し、30年以上大工として稼働しており、本件事故当時、一人親方部会の労災保険に加入していた。
Xは、平成15年4月中旬、Yから建前の作業依頼を受け、同月22日朝、Xは、カケヤ等の大工道具を持参したが、電動工具等の高価な道具はYが所有するものを使用した。Xは工事期間・報酬を事前に知らされていなかったが、期間は1日、報酬は2万円と考えていた。同日は、コンクリート基礎に柱を立てて梁を組み、2階床部を貼る作業で、午前中は、Yの指示に従って基礎の上に柱を立てて骨組みを作り、傾きを直すなどの作業が行われた。午後は、壁や床といった建物の面を構成するコンパネ(合板)をはめ込む作業が行われ、Xは、大工のBと2人で、未だ床のない2階部で、平面部に端から順番にコンパネをはめ込んで床面を形成する作業を行った。2階部の平面部から地面までの高さは約3.5メートルであった。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら