中央建設国民健康保険組合事件(東京地判平19・10・5) 退職金引下げ協約、反対の定退者が差額を請求 原告への拘束力は生じない
退職金支給率を引き下げる労働協約の締結後、改定に反対していた組合員が退職し、退職金の差額500万円余を請求した。東京地裁は、労働組合は不利益を被る者への救済措置等を検討することなく多数決で押し切ったもので、労組の目的・授権の範囲を逸脱しているとし、原告への拘束力を及ぼすことはできないと判示。労組内の手続きは関知しないとの使用者側の主張も斥けた。
多数決で押し切る 授権の範囲を逸脱
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Yは国民健康保険業務を扱う組合で、Xは昭和46年にYと労働契約を締結し、平成18年12月31日に定年退職した。在職中は、職員で組織する訴外中建国保職員組合に所属していた。
Yの退職金制度では、退職金額は基準内賃金に勤続年数と勤続年数に応じた指数とを乗じて算定していたが、Yと職員組合は、平成17年7月19日に退職金制度改定に関する労働協約を締結し、勤続31年以上の指数を211から181に変更した。本件労働協約締結に先立ち、職員組合が行った臨時大会に組合員51人中49人が出席し、そのうち賛成47人、反対2人であった。
Xは、本件労働協約締結に反対し、その旨を組合に申し入れ、不服申立書を提出するなどしたが、職員組合は、最初の申入れに対して一応の回答をしたものの、その後は対応せず、本件労働協約の締結に至った。
本件労働協約により、Xの定年退職金は、3784万6612円から3246万5578円に減額されたため、Xは差額の支払いを求めて提訴した。…
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