日刊工業新聞社事件(東京高判平20・2・13) 倒産危機で退職金を一律50%に…改定は有効か 減額に合理性あり許容可能
退職金を半額にする就業規則の改定について、定年者を含む8人がその無効確認と差額を請求した事案で、改定の合理性を認めた一審判決を不服として控訴した。東京高裁は、原判決を踏襲しつつ、倒産回避のための措置で、仮に清算した場合の労働債権の配当率も25%程度とならざるを得ず、このような水準と比較すれば50%減額は不合理とはいえないとして請求を棄却した。
破産清算より有利 経営再建策の一つ
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告会社を定年退職した原告らおよび在職中の原告が、平成15年6月、給与規程に定められた退職金に関する規定(A規定)が改定され(B規定)、退職金の額が半額に減額され、さらに、平成17年4月、同規定が改定された(C規定)ことにつき、これらの改定は無効であると主張して、定年前の原告につき各改定の無効確認を、定年退職等した原告らにつきA規定による退職金額と現実に支払われた退職金額との差額支払等を請求した事案である。
被告は、「日刊工業新聞」の発行のほか、出版事業などを営む会社であるが、バブル崩壊とともに業績が低迷し、平成14年7月、主力銀行に緊急融資を申し入れたがこれを拒絶され、定期預金の解約、生命保険の解約により資金調達を行っていた。
そこで、被告は、コンサルティング会社P社と委託契約を締結し、P社は平成15年3月、被告の事業および財務の状況、経営改善計画の内容を検討し、調査報告書を提出した。その内容は、200人の希望退職者募集、不動産資産の売却、役員報酬の削減および役員退職金支払の債務超過解消までの繰り延べ、従業員退職金の50%削減、経営陣の総退陣などであった。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら