三菱自動車工業事件(最二小判平19・11・16) 執行役員が就任契約に基づき退職慰労金を請求 支払う合意や慣習成立せず ★
退職慰労金の支給は、執行役員就任契約における明示的・黙示的な合意内容だったと最高裁に上告した事案。最高裁は、一審・二審を支持し、功労報償的な性格が強く代表取締役の裁量で支給されていたに過ぎないと判事。経営状況によっては不支給あるいは減額もあることを前提に慰労金規則を改正し、必ず支給する旨の合意や事実たる慣習は認められないとして請求を棄却した。
功労報償的なもの 裁量的判断で決定
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
本件は、三菱自動車工業(被上告人)の執行役員を平成12年6月から4年間務めた上告人が、被上告人に対し、その内規である執行役員退職慰労金規則(同15年1月1日施行のもの。以下「旧規則」という)所定の金額の退職慰労金の支払いが明示的または黙示的に執行役員就任契約における合意の内容となっていたなどと主張して、その支払いを求めた事案である。
原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1)被上告人は、取締役の人数が多数に上り、取締役会における経営判断を迅速に行い得ない面があったことなどから、経営判断の適正迅速化、責任および権限の明確化等を目的として、執行役員の制度を導入することとし、平成12年4月、取締役の人数を36人から10人に減少させるとともに、事業分野、機能分野ごとに業務執行の責任および権限を有する32人の執行役員(うち4人は取締役兼務)を設けた。
(2)同制度の下において、執行役員は、従前は取締役が就いていた職務上の地位に就任し、報酬額その他の待遇面においても、従前の取締役と同等の待遇が保障されていた。また、被上告人の執行役員規則によれば、…
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