国・中労委(ネスレ日本霞ヶ浦工場)事件(東京地判平20・11・19) 団交応諾命令の取消訴訟、組合員退職し効力は 労使関係なく救済意義消滅 ★
組合員の退職強要問題等を議題とした団体交渉に応じないのは不当労働行為とした中央労働委員会の命令を不服として、会社が取消訴訟を提起した。東京地裁は、従業員である組合員が全員退職したことで、団交応諾命令は救済の手段としての意義を失ったと判示。雇用関係にない組合員との紛争処理は労組法の埒外で、民法等私法上の権利義務関係で処理するべきとした。
労組法上の埒外に 私法で紛争処理を
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
X社は、海外に本部を置く企業グループに属する飲食料品の製造および販売等を行う株式会社である(なお、本件では、X社の会社組織が若干の離合集散を繰り返した経緯があるが、本解説では省略する)。
Y労組支部(補助参加人)は、X社全体を総括するZ労組本部の5つある支部のうちの1つであり、X社の霞ヶ浦工場を所轄していた。
Y労組支部はX社に対し、組合事務所および掲示板の貸与、組合員Aに対する退職強要問題等を議題として、平成13年5月10日付け申入れから同14年7月18日付けまでの計7回の申入れにより、指定日に霞ヶ浦工場内で団体交渉を行うよう求めた。
これに対し、X社は、業務の都合上、Y労組支部の指定日には団体交渉を開催できないとしつつ、場所を神戸市内のホテルとし、Z労組本部および5労組支部が連名で参加する方式の団体交渉を申入れるなどし、また、組合員Aはすでに退職しておりX社の従業員でないなどの理由から、団体交渉の申入れに応じなかった。
平成14年9月、Y労組支部は、茨城県労働委員会(以下「茨労委」)に、X社の対応が団交拒否および支配介入の不当労働行為(労組法第7条2、3号)に当たるとして救済を求めた。さらに、Y労組支部は、X社が、同15年1月8日付けの団体交渉申入れに応じず、法人名義を使い分けて使用者をあいまいにしていることも、団体交渉拒否および支配介入の不当労働行為に当たるとして、救済を求めた。…
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