杉本商事事件(広島高判平19・9・4) 残業代不払は不法行為 時効消滅分の賠償請求 適正な時間管理義務に違反 ★
退職した社員が時効消滅分を含む時間外割増賃金を請求、一審は労基法違反と認めたが、不法行為に基づく損害賠償請求を棄却したため控訴した。広島高裁は、出勤簿に出退勤時刻が記載されておらず、労働時間適正把握義務や、法所定の割増賃金請求手続きを行わせる義務に違反した態様を鑑み、不法行為の時効期間である過去3年に遡り時間外手当を支払うよう命じた。
出退勤管理を懈怠 3年分支払必要に
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被控訴人は、精密測定機器、金属工作機械等の販売および輸出入を業とし、控訴人は、昭和56年ころから被控訴人の広島営業所に勤務したが、その勤務実態等は次のとおりであった。
① 控訴人は、得意先・メーカーと電話・ファクシミリでの対応、注文・見積りの処理等を主な仕事とする内勤業務に従事していたが、平成15年6月から退職するまでの間は、業務量としては大きな変動はなかった。
② 被控訴人においては、営業所の所員全員が参加する営業所会議等、一定の場合を除き、通常の時間外勤務に対しては、自己啓発や個人都合であるという解釈に基づき、時間外勤務手当を支払っておらず、平成16年9月に労働基準局の巡回検査の際に指摘されたものの、その後も特に改善されることはなかった。広島営業所の出勤簿には、平成16年11月21日までの出退勤の時刻が記載されておらず、被控訴人が従業員のそれを書面その他の記録で把握する方法は存在しなかった。…
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