T社事件(甲府地判平21・3・17) 子の保育園送迎に社有車使用、解雇処分は酷か 注意すれば足り制裁重過ぎ
派遣会社の営業社員が、社有車を子の送迎に使用したほか、職場秩序を乱す数々の就業規則違反を理由に解雇されたため、雇用契約上の地位確認等を請求した。甲府地裁は、車利用を直接注意した事実もなく黙認されており、些細な事実で制裁として重きに過ぎて合理性を失すると判示。加えてその他の解雇理由も、規則の違反条項が不明であり権利濫用として無効とした。
指導した事実ない 権利の濫用で無効
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
T社(会社)は、労働者派遣事業等を行う株式会社である。労働者甲は、平成17年1月5日営業職として期限の定めなく雇用された者で、会社の山梨営業所に配属された。
会社は平成19年8月24日、甲に対し、就業規則違反(勤務成績または作業効率が不良で業務に適さないと認められたとき、許可なく職務以外の目的で会社および取引先会社等の施設、車輌、機械器具、工作物、物品等を使用しないこと等の遵守事項にしばしば違反し、就業に適さないと認められたとき等)に基づき、同日をもって普通解雇する旨の意思表示をした。
会社の主張する解雇理由は、①特定した営業先に毎朝直接訪問し、朝の出社は、ほとんどなかった。朝会社に出社しないということは、職場の秩序を乱すため何度か指導したが、指導後3カ月たっても改善されない。②許可なく仕事以外の目的で、社有車を使用して契約違反行為を行った等であった。
甲は、本件解雇には会社が主張するような解雇理由はなく、仮に解雇理由があるとしても相当性を欠き解雇権を濫用したものであるから無効であると主張して、会社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに賃金、慰謝料等の支払いを求めた。
判決のポイント
(1)解雇理由①について…
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