松下プラズマディスプレイ事件(大阪高判平20・4・25) 偽装請負を理由に発注元へ「直接雇用」求め控訴 黙示の労働契約成立認める ★
下請社員が偽装請負を理由に発注元へ直接雇用を求めたものの、一審で労働契約不成立と判断されたため控訴した。大阪高裁は、発注元が指揮命令していた点などから実態は法律違反の「労働者供給」と断じ、下請会社と労働者間の雇用契約も公序良俗に反し無効とした。そして、使用従属・賃金支払関係などから、発注元・労働者間の関係について黙示の労働契約が成立していたと判示した。
実態は労働者供給 公序良俗に反する
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成16年1月、期間2カ月・更新ありとして訴外P社に雇用された。P社は、資本関係・役員等人的関係のないYと業務委託契約を締結し、Xは、Yの工場で製造業務に従事したが、そこではYの社員による指揮命令を受けていた。
平成17年4月、Xは、このような就労実態を違法であるとして、Yに直接雇用の申入れを行い、その後、地域労働組合に加入し直接雇用を要求する一方、労働局に「偽装請負」の申告をした。Yは労働局の是正指導を受けてP社との契約を解消し、別会社と派遣契約を締結したが、Xはあくまで直接雇用を求めたので、同年8月、Xと期間工雇用契約を締結した。契約書には、契約期間翌年1月31日まで、3月末を限度として更新することがあるとされていたため、Xは異議を留めて契約を締結した。その後は、ただ1人、従来と異なるリペア作業を命じられ、18年1月31日期間満了により契約終了とされた。
Xは、当初よりYとの間に直接、黙示の労働契約があったこと、派遣法に基づく労働契約の成立、解雇・雇止めの無効などを主張し、また不法行為による慰謝料を請求した。
一審(大阪地判平19・4・26)は、慰謝料45万円の支払いのみを命じ、Xのそれ以外の主張・請求を退けた。…
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