富士火災海上保険事件(東京地判平20・1・9) 顧客負担の振替手数料、給与から天引きとは 賃金の全額払いに反し無効 ★

2008.07.14 【判決日:2008.01.09】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 保険料の振替手数料も出来高給にカウントする損保会社が、給与から同手数料実費相当分を控除したため、従業員が賃金全額払いに違反するとして不当利得返還を請求。東京地裁は、賃金控除協定は同意していない少数労組、個々の組合員に対して効力は及ばないと判示。給与からの控除が、単なる給与計算方法の変更とみることはできず、実費の清算とみる余地もないと請求を認容した。

控除の同意がない 協定あってもダメ

筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)

事案の概要

 原告2人は、直販社員ないし外務員として、損害保険会社である被告に雇われ、自動車・火災保険などの損害保険の勧誘、保険契約の締結、保険料の集金等に従事している。被告には、従業員の9割以上で組織されている多数組合と、原告らの所属する少数組合がある。

 被告は、昭和60年頃から口座振替による集金を推進し、口座振替は、平成8年3月末には89.4%となった。被告は、口座振替集金で発生する振替手数料については、年間保険料に上乗せし、これを契約者に負担させていた。

 直販社員の給与体系は、固定給と、獲得保険料に保険の種類ごとに一定の換算率を乗じて算出する出来高給から成っており、外務員の給与体系も概ね同一であった。

 被告は、直販社員および外務員(併せて「外直社員」)において保険料口座振替に要した実費を負担することを前提にした給与体系に就業規則を変更することとし、多数組合の同意を得て、平成10年1月以降平成16年4月にかけて、順次口座振替の実費相当分を月例給与から控除する取り扱いを行った。その結果、原告2人はそれぞれ、給与額の約5%、2%の控除を受けることとなった。…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

ジャンル:
平成20年7月14日第2688号14面 掲載
  • 広告
  • 広告

あわせて読みたい

もっと見る
ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。