前田道路事件(高松高判平21・4・23) 不正経理の叱責を自殺原因とした原審判断は? 指導は正当な業務の範囲内

2009.11.09 【判決日:2009.04.23】
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 不正経理を行った道路工事会社の営業所長に対する上司の指導・叱責で、うつ病を発症し自殺したとした一審を不服として、会社らが控訴した。高松高裁は、不正経理の解消は容易な目標でなく、強い叱責の存在は認めたが、上司の正当な業務の範囲内で不法行為に当たらないと判示。自殺との相当因果関係はなく、予見可能性もないとして安全配慮義務違反を否定した。

不法行為ではない 兆候なく予見不可

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 被告は土木建築工事の請負等を業とする株式会社であり、Dは昭和61年4月に入社した後、平成15年4月、被告の四国支店東予営業所の所長に就任した。

 Dは所長に就任した1カ月後の平成15年5月ころから、営業事務を担当していたOに指示して「不正経理」を開始した。同年6月、四国支店工務部長であったMがこれに気付きDに対し是正を指示したが、Dは報告を偽って是正しなかった。

 平成16年7月、Mの後任のJがDを問い質したところ、同年6月末時点で約1800万円の架空出来高を計上しているとの報告を受けた。JはDの経歴に傷がつくことを懸念し、Dに対し、大幅な赤字を出す方法ではなく、利益の予測に基づいた架空出来高の解消計画を作成するよう指導した。また、東予営業所では工事日報をつけていなかったため、同年8月、JはDに対し工事日報を作成し、毎日、提出するよう指示した。

 同年9月10日、東予営業所で業績検討会が開催されたが、利益が目標値に達していなかったため、Dは、部下のFに検討会資料の改竄を指示した。しかし、検討会で改竄の事実が判明したため、Jは資料を作成したFやDを厳しく叱責するとともに、架空出来高を解消すべく利益を上げるよう鼓舞した。その後、同月13日、Dは自殺した。…

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平成21年11月9日第2752号14面 掲載
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