Yタクシー会社(雇止め)事件(京都地決平19・10・30) 労組の統制処分理由に再雇用の期間満了扱いは 裁量を逸脱した制裁で無効
60歳到達後に嘱託再雇用されたタクシー運転者が、営業所の不正行為を告発したところ、労組の統制処分を受け、これに基づき会社から雇止めされたため、労働契約上の地位の確認を求めた。京都地裁は、当該事実をもって労組が処分を行うことは著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱した無効なもので、使用者には雇止めの義務は生じないと判示し、解雇法理を類推適用し雇止めも無効とした。
雇止め義務生ぜず 他に懲戒事由なし
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
タクシー会社Y社では60歳定年制を採用しており、平成13年に入社した債権者Xは、60歳になる直前の16年5月、Y社との間で契約期間を1年とする有期雇用契約を締結し、同契約を17年5月に更新した。
Y社は、平成18年4月に、労働組合と高年齢者雇用安定法に基づく労使協定を締結したうえで就業規則の改定を行い、健康状態に問題がある者、無断欠勤がある者、勤務成績が一定以下の者、組合の懲罰委員会で制裁を受けた者等に該当しない者については再雇用すること、これらに該当する者であっても、状況によっては再雇用する場合があること、雇用契約期間を62歳までとすること、63歳以降については1年単位とし、契約更新の上限は定めないこととした。
これを受けて、XとY社は、平成18年4月、嘱託労働契約書をもって、期間を同年5月21日から19年5月20日までとする有期雇用契約を締結した。
Xは、Y社労働組合のA支部から、従業員、営業所所長の白タク営業、メーターの不正操作、営業日誌ねつ造等の疑惑がある旨記載されている文書を入手し、労働組合全支部長およびY社代表へ真相解明および問題の解決を求める書面を作成し送付した。その後Xは、京都運輸支局に所長が白タク行為に関する報告を行ったかどうかを確認し、また警察署に対し、白タク行為を把握した旨を申告した(その後検察庁は不起訴処分)。
組合は、平成18年10月、Xが指摘した問題解決に向け、支部労使会を開催することで対処する旨が決定されていたのに、同月14日に執行委員へ、同月22日にY社幹部へ文書を提出したことを理由に、制裁処分として、Xに対し戒告、および罰金を課した。…
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