テクノアシスト相模事件(東京地判平20・2・13) 請負社員が転落死、発注側にも安全配慮義務? 実質的に使用従属関係ある
高温の中、高さ約89センチメートルの足場の悪い作業台から転落死した請負労働者の両親が、請負人と発注者双方に対して安全配慮義務違反等に基づく損害賠償を請求した事案。東京地裁は、発注者の所有する機械設備を用いて作業し、発注者の指示の下に労務の提供を行っていたことから、実質的に使用従属の関係にあったと判示。転落防止措置を怠った両社に損害賠償を命じた。
ライン管理し指示 設備や器具も供給
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
原告X1・X2(以下「Xら」)は、被災者甲の両親である。
甲は、製造業務請負等を業とするY1に2カ月の有期労働契約の従業員として雇用され、平成15年7月29日から、Y1が締結した作業請負契約の注文者である製缶等を業とするY2の工場において、検缶作業等の製造検査補助業務に従事していた。
甲は、同年8月2日に、転落防止設備が施されていない、高さ約89センチメートル、足場面積40センチメートル四方の作業台の上に立って、ヘルメット着用のうえ、ライン上を流れる缶の蓋の検蓋作業に従事していたが、同日昼過ぎ、作業台の近くに倒れているところを発見された。甲は、救急車で病院に運ばれ、「脳挫傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、頭蓋骨骨折、外傷性くも膜下血腫」と診断され、緊急手術等の治療を受けたが、意識が戻らないまま11月8日に死亡した。
Xらは、Y1、Y2およびY2社の代表取締役Y3・同監査役Y4に対して、それぞれの安全配慮義務違反または不法行為責任等を理由として、損害の賠償を求めて提訴した。
判決のポイント
(1)Y1の責任
Y1は、甲との間の雇用契約上の信義則に基づき、使用者として労働者の生命、身体、健康を危険から保護すべき義務(安全配慮義務)を負う。…
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