インフォーマテック事件(東京地判平19・11・29) 整理解雇され、規程の廃止で退職金もゼロとは 取止め証拠なく規程は有効
市場調査会社の従業員が、整理解雇され未払退職金と違法な解雇による損害金を請求。一方、会社は労組のビラ配布を名誉毀損で訴えた。東京地裁は、会社は退職金規程の存在を否定するが、従業員への周知段階で成立と判示。また、解雇回避努力を怠り権利濫用で不法行為に当たるとして、賃金6カ月分の損害金を認めた。ビラ配布については、計50万円の支払いを命じた。
従業員へ周知済み 解雇も不法行為に
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y1社はIT分野のマーケットリサーチ等を業とする株式会社であり、Xは昭和60年6月からY社に正社員として採用されていた。Y2はY1社の代表者、Y3はその妻でY1社の従業員であった。
Y1社は、平成6年11月30日付で退職金規程を作成し、従業員代表者としてY3がこれに署名・押印しており、Y1社の会計帳簿にも退職給与引当金が計上され、Xを含む全従業員が本件退職金規程の存在を認識し、全従業員に周知された。
本件退職金規程には、従業員がやむを得ない業務上の都合で退職するときは、退職時における基本給の月額に勤続年数に応じた退職金支給基準率表に定める率を乗じて算出した退職金を支給する旨、規定されていた。
Y1社の売上げは平成12年事業年度約1億7800万円、同13年度約2億1300万円、同14年度約1億9600万円、同15年度約1億4100万円、同16年度約1億1800万円と推移していた。
Y1社は赤字であることを理由に、Xに対し給与額の減額を求め、平成15年4月には月額36万5500円に、平成17年4月には月額33万円にすることにつき、Y1社とXとで合意した。平成18年2月、Y1社はXに対して月額10万円とする旨を通告した。…
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