熊本県教委事件(福岡高判平18・11・9) 教諭が飲酒運転で2度逮捕、懲戒免職は妥当か 加重処分として合理性欠く ★
中学校教諭が、2度にわたる酒気帯び運転による逮捕等で懲戒免職されたため、処分の取消しを求めたが、一審では飲酒運転抑止のための人事院指針に沿った措置であると請求を棄却した。控訴審の福岡高裁は、非違行為が複数あって加重処分として免職を選択するには行為の行状やそれに至る経緯、教諭の高い評価等を考慮すると厳しすぎるとして、有効とした一審を取り消した。
非違行為複数でも 総合的判断が必要
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
本件は被控訴人が中学校の教諭であった控訴人に対し、(ア)平成15年11月21日午後11時ころおよび同月22日午前1時過ぎの2回にわたり酒気帯び運転をしたこと、(イ)同月18日、生徒の成績や名簿などを保存した光磁気ディスク(MO)の紛失を理由に、地方公務員法29条1項1号・3号により平成16年1月13日付で懲戒免職処分したことにつき、控訴人が、(1)本件処分を行うに当たって被控訴人が依拠した懲戒処分指針は無効であり、(2)そうでないとしても①被控訴人は控訴人に対し、本件指針について事前に十分な告知・説明をしていない、②本件処分への適用が適正でない、③本件処分は平等取扱いの原則に反する、④本件処分は相当性の原則を逸脱している、⑤本件処分に当たり、控訴人に弁明の機会を与えなかったなどの重大な手続的違法があるとして、本件処分の取消しを求めた事案(ただし、平成17年4月18日付でした訴えの一部取下げ後のもの)である。
判決のポイント
1 地方公務員たる教員について、教員が児童・生徒を教育指導する立場から、とりわけ高いモラルと法及び社会規範順守の姿勢が求められるから、酒気帯び運転などの非違行為について、他の職種の公務員よりも重い懲戒処分の指針(以下「指針」)を定めることもその職責の重さに照らせば、合理的な理由がないとはいえない。…
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