全労連合同労組(トラストシステム)事件(東京地判平19・9・10) 解雇巡り街宣・ビラ配布、会社が名誉毀損と提訴 内容は真実で違法性もない
解雇労働者が地域合同労組に加入し、解雇撤回に向けて街頭宣伝や違法派遣を示唆するビラ配布を行ったため、会社は売上げ減少や名誉毀損等を理由に損害賠償等を請求した。東京地裁は、街宣・ビラ配布の態様と内容を検討したうえで、ビラの表現はともかく、内容は真実あるいは真実相当性が認められ、正当な組合活動の範囲と判示、違法行為となるものではないとして請求を棄却した。
組合活動の範囲内 表現法はともかく
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X社は、情報処理産業における業務委託、自社開発、委託開発等を行う会社であり、Y2は、X社を解雇された者である。
Y2は、雇用関係の確認等を求めて、地位保全等仮処分、解雇無効確認等請求の本訴を提起し、また、労働局に紛争解決援助を求めるとともに、労働組合であるY1に加入した。
Y1は、Y2の解雇撤回等を要求し、団体交渉を行うとともに、X社の取引先の周辺等で拡声器を使用しての演説およびビラ配布等の街宣活動行ったり、X社の本社ビルを訪れて解雇撤回を申し入れたり、同ビルの他のテナントにビラを配布する等した。
そこで、X社は、Y1、Y2による街宣活動等により名誉・信用を害され、平穏に営業活動を営む権利が侵害されたとして、街宣活動の差止めおよび不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
組合活動の適法性について
Y1は、労働組合として、団結権及び団体交渉権が保障されており、組合員の労働条件その他、経済的地位の維持・向上を目指して活動することが認められている。このような労働組合の目的に適う活動の過程で行われた行為は、たとえ他者の名誉、信用その他の権利を侵害したとしても、違法性が阻却されることがあるというべきである。そして当該行為が事実を摘示しての表現行為である場合には、その必要性、動機、態様等一切の事情を考慮した上、事実が真実であるか真実であると信じることに相当の理由がある場合には違法性が阻却されると解するのが相当である。…
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