日本構造技術事件(東京地判平20・1・25) 賃金凍結?減額?希望退職者が差額分を請求へ 合意の主張は余りに身勝手
19人の希望退職者が、経営悪化を理由とした賃金カットは一時的な「凍結」と主張し、差額分や割増賃金等を退職後に請求した。東京地裁は、文書等で周知し異論がなく合意があったとの会社主張を身勝手な受け止め方と断じ、また就業規則の改定との主張も、官公庁OBは減額しないなど公平な取扱いでないことなどから、不利益変更要件を検討するまでもなく賃金カットを違法・無効とした。
異論・反論ないが 一部で公平性欠く
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Y社は建設コンサルタントを主たる業務とする株式会社で、Xら19人は、平成17年3月10日付けの希望退職募集に応募し、同18年4月末日に退職した。
Y社は、平成16年2月25日、Xらに対し、2月以降5~15%の賃金支払いの凍結措置(Xらの主張)ないし賃金の削減措置(Y社の主張)を講じることを通知し、賃金の支給を行った。
その後、Xらは、平成18年7月19日付けで、賃金凍結分および未払い割増賃金の支払いを催促し、同年12月28日付けをもって本件提訴をした(編注・Xらの中には部長、課長職に就いていた者が含まれているため、判決ではその管理監督者性や割増賃金額なども詳細に検討しているが、本欄では未払い賃金の部分に絞って紹介する)。
判決のポイント
問題は①カットした賃金についてあとで未払賃金としてY社からXらに対して支払う合意があったかどうか、また、Xらが賃金減額に同意していたかどうか、②そのような支払約束の合意や賃金減額への同意がなかったとして、Y社が主張するように就業規則の改定に相当するもので賃金カットに合理性があるとして有効かどうかである。
Xは当時賃金カットがあくまで合意を前提とした一時的な賃金支払の凍結にすぎないとするのに対して、Y社は賃金減額の趣旨であるという。…
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