モリタほか事件(東京地判平20・2・27) 不当労働行為責任は労働契約承継先のみ負うか 分割会社にも使用者性あり ★
管理職組合への事務所不貸与や、会社分割前の団体交渉に誠実に応じなかったことは、不当労働行為に当たるとした中労委命令を不服として、分割会社らが取消訴訟を提起した。東京地裁は、不当労働行為責任は労働契約を承継した新設会社だけでなく、労働契約関係がない分割元の会社も使用者たる地位を失わないと判示したほか、団体交渉についても責任を認容した。
契約移行前に発生 救済利益は存する
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告モリタ(原告M)は、平成15年10月1日、会社分割(新設分割)により、原告エコノス(原告E)を設立した(分割前の原告Mを原告旧M、分割後の原告Mを原告新Mという)。
主として大阪府内の事業所に勤務する労働者で組織する補助参加人組合(補助組合)およびその下部組織であり、原告旧Mおよびその関連会社に勤務する管理職により構成する補助参加人分会(補助分会)は、(1)原告旧Mが補助組合らに対し事務所等を貸与しなかったことが労組法7条3号に、(2)原告旧Mが会社分割に関する団体交渉に誠実に対応しなかったことが労組法7条2号に、各々当たると主張し、平成15年8月8日および9月26日に、大阪府労委(府労委)に対し不当労働行為の救済を申し立てた。
府労委は、(1)および(2)が不当労働行為に当たると認め、(1)に関し原告新Mには文書の交付を、原告Eには文書の交付と事務所等の貸与に関する誠実協議および貸与を、(2)に関し原告新Mおよび原告Eに文書の交付を命じた。これに対し原告らは中労委に対し再審査申立を行ったが、原告Eに対する文書交付の点は変更されたものの、その余の申立については棄却された。
そこで、原告らが、不当労働行為の成否を争うとともに、①会社分割により、原告旧Mと補助分会の分会員の労働契約関係は原告Eに承継され、以後、原告新Mと補助分会の分会員間の労働契約関係はなくなったので、原告新Mは「使用者」には当たらない、②平成17年9月5日の団体交渉等において、原告らは、補助組合らに対し原告Eの収益見込み等について説明を尽くしているので、原告新Mに対し文書交付を求めるべき必要性は消滅している等と主張して、中労委の命令を取り消すよう求めた。…
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