塩釜交通事件(仙台地判平20・6・12) 労組脱退工作受けた組合員が会社に慰謝料請求 積極的な介入で団結権侵害
破たんした会社から営業譲受した労組役員が経営するタクシー会社で、中途採用者が対立する別労組へ加入し、会社から賃金減額を受けたうえ脱退届を強要されたとして、加入労組とともに不当労働行為による不法行為に基づく慰謝料を求めた。仙台地裁は、脱退工作は陰湿な形で継続し、団結権を不当に侵害すると慰謝料を認めたが、原告組合に実質的損害は発生していないとした。
陰湿な慫慂を継続 精神的苦痛に50万
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X1は、平成10年9月頃、S交通に自動車修理工として入社し、平成15年9月頃、労働組合X2の組合員となった。
X1は、当初、X2組合加入の事実を秘密にしていたが、平成16年3月、X2の組合員であることを明らかにしたところ、役員(Y1)、従業員(Y2)から、職場の鍵を取り上げられて自宅待機を余儀なくされたり、今後一切、分解整備の仕事をしないよう通告されたり、賃金カットをされる等の嫌がらせを受けた。平成17年2月には、他の組合員の退職、脱退により、X1が唯一の現役組合員となり、その後、Y2に呼び出されて組合を脱退する意思がないかどうか打診されたり、X1が(口実として)「委員長から借金をしているので辞められない」というと、会社で立て替えるから返済するようにいわれた。
5月31日、Y2が脱退届の用紙を用意して提出を迫ったため、X1は脱退を決意し、脱退届をX2に郵送したが、同夜、翻意して脱退を撤回し、翌日、委員長とともにY2に組合を脱退しない旨を伝えた。
その後、X1、X2が原告となり、脱退工作は不当労働行為に該当し、不法行為が成立するとして、Y1・Y2に対し各100万円の慰謝料をそれぞれ請求して提訴した。
判決のポイント
1 不法行為の成立
Yらは、Xらの主張する脱退工作を行ったものと認められるところ、その態様は、会社の実質的経営者の立場にあるY1と、これを補佐する立場にあるY2が共同して、…
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