医療法人康心会事件(最二小判平29・7・7) 「医師は好待遇」と残業代含む合意認めた原審判断は 割増賃金部分判別できない ★
「医師に時間数に応じた賃金はなじまない」「好待遇で割増賃金は年俸に含む」として、医師の未払残業代請求を棄却した事案の上告審。病院では緊急業務などには割増を支払う一方、通常業務の延長は対象外としていた。最高裁は、割増の対象外となる部分を年俸1700万円に含める合意はあったが、通常の労働時間の賃金と判別できないとして、審理のため差し戻した。
年俸の内訳は不明 労働者として保護
著者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、医療法人である被上告人に雇用されていた医師である上告人が、被上告人に対し、上告人の解雇は無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めるとともに、時間外労働および深夜労働に対する割増賃金並びに付加金の支払等を求める事案である。
高裁段階まで解雇が有効であることは結論が一致しており(最高裁もこの点の医師側の上告不受理決定)、上告審では専ら残業代の未払いの存否が問題となった。
原審(東京高判平27・10・7)の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
上告人は、平成24年4月、病院、介護老人保健施設等を運営する医療法人である被上告人との間で、雇用契約を締結した。本件雇用契約に係る契約書の内容(残業代部分)は以下のとおりである。
(ア)年俸を1700万円とする。
(イ)本件時間外規程は、(1)時間外手当の対象となる業務は、原則として、病院収入に直接貢献する業務又は必要不可欠な緊急業務に限ること、(2)医師の時間外勤務に対する給与は、緊急業務における実働時間を対象として、管理責任者の認定によって支給すること、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら