ジブラルタ生命事件(名古屋高判平29・3・9) 吸収合併で部門廃止、望まない営業職へ移動は 「職種限定」考慮し配転無効
営業社員を育成するリーダー職で採用された者が、配転命令の無効を求めた。吸収合併後に所属部門が廃止され、業務上の都合による配転を有効とした一審に対し、二審は、固定給の保証された入社後2年間の職種限定合意を認定。配転に誠実な対応が求められる中、希望しない営業マンとしたことに正当な理由はないとした。企業規模から他職種を提示できたとしている。
他職種提示できた 誠実な対応を欠く
著者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は、平成22年8月1日にE生命に入社したものであり、被控訴人は、平成24年1月1日にE生命を吸収合併(以下「本件合併」という)した会社である。
控訴人は、E生命においてASP事業部の新設に伴い、営業専門職(SP)を採用・育成し、部下にSPを持ちオフィス運営を行う管理職であるSPLとして、特別採用されたものであり、処遇も、特別扱いとして、初期の2年間は営業活動の有無等にかかわらず固定給が保証されていた。またE生命の勧誘資料には、SPLの部下であるSPや上司であるSPMについて、意に沿わない転勤がないことを保証した趣旨と解される記載があった。控訴人はE生命に入社後、SPLとして業務に従事してきた。
しかし、被控訴人は、本件合併に伴いASP事業部を廃止し、ASP事業部特有の職種であったSPLに従事していた従業員を①営業管理職系のチーフトレーナー、②営業所長、③営業社員系のシニアパートナー、④営業社員のいずれかに移行することとした。E生命は、本件合併に先立ち、控訴人に移行職種の希望を聴取したが、控訴人は、職種移行自体に納得せず希望を示さなかったところ、④の営業社員に移行されることとなった(以下「本件配転」という)。
なおSPLに適用される就業規則には、業務上の都合により、配置転換を命じ得る旨の規定がある。その後、控訴人は、本件配転後の営業社員としての職務の懈怠を理由に懲戒解雇されたが、…
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