公立大学法人岡山県立大学ほか事件(岡山地判平29・3・29) 「入試結果改ざん」と報道され内部告発者を停職 情報提供理由の懲戒は無効
入試の採点で不正があったと報道され、先だって内部告発していた教授を「情報提供者」として停職とした事案。処分の違法性を争った。大学の名誉や信用を失墜させたとの懲戒理由について岡山地裁は、仮に情報提供者としても、告発内容は採点関係者の供述と符合し、不正を信じる正当な理由があったと認めて処分無効とした。情報提供の目的は公益性を有するとした。
“真実相当性”あり 関係者と供述符号
著者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Xは、デザイン学部の教員を務め、Y大学に雇用されている者である。Xは、平成25年2月26日、Y大学理事長であったAに対し、入試採点結果の改ざんがなされている旨を告発する書面を提出した。 本件告発書においては、①23年度入試の採点において、採点委員の1人であったCが、上位得点者の得点を低く訂正するようXに指示し、Xがそれに従ったことや、②24年度入試の採点において、採点責任者が、上位得点者のデッサン1枚を取り上げ、「この実技点ではセンター(試験)230点が入ってしまう」といって、そのデッサンの得点を低く訂正するようXに指示し、Xがそれを拒否すると、Y4とXとの間で口論が発生したことなどが指摘されている。
Y大学はXの告発を受け、平成25年3月4日、内部調査委員会を設置し、本件告発内容に関する内部調査を開始した。同月18日、記者によるXらへの取材が行われ、同月19日、テレビニュースで、Y大学の平成23年度入試において、2人の教授が、センター試験の得点が低い受験生を合格させないために、1度採点していたデッサンの得点を低くなるように操作した疑いがあるとの情報が寄せられた旨の報道をした。
その後、Y大学は、本件告発内容に関し、外部委員を含む新たな調査委員会を設置し、同委員会は、調査の結果、入試において、得点を低く変更する操作が行われた事実はない等の発表を行った。その後、Y大学は、25年9月13日、Xに対し、停職3カ月とする懲戒処分を行った。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら