東日本旅客鉄道事件(東京地判平29・6・29) 賞与支給直前に定年退職、不支給は差別と提訴 「基準日在籍要件」に合理性
賞与の「支給基準日」の1日前に定年退職した元従業員が、合理性のない差別的取扱いとして損害賠償を求めた。支給日の1カ月以内に退職した者には支給すると規定していたもの。東京地裁は、支給日に近接した基準日を設け、在籍を要件とすることの合理性を認容。査定期間にすべて従事したとの主張には、将来の貢献への期待要素が含まれ、賃金と同視できないとした。
将来への期待含む 査定期間は勤務も
著者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
平成28年4月末日で被告会社を定年退職した原告ら3人は、賃金規程では4月に定年を迎え同月末日で定年退職する者のみ期末手当が支給されない仕組みとされており、これが合理性のない差別的取扱いに該当し、公序良俗に反し違法であると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、平成28年度の夏季手当相当額等の支払いを求めた。
旧賃金規程には、期末手当の支給範囲について、「期末手当は、6月1日(夏季手当)および12月1日(年末手当)(以下、両日を「基準日」という)にそれぞれ在籍する社員および基準日前1箇月以内に退職しまたは死亡した社員に対して支給する」と規定していた。また、調査期間を、「夏季手当は、前年12月1日から5月31日まで、年末手当は、6月1日から11月30日まで」と規定していた。被告は、平成元年4月1日付けで、調査期間を、「夏季手当は、前年10月1日から3月31日まで、年末手当は、4月1日から9月30日まで」とし、年末手当の基準日を11月1日とする改定を行った。
判決のポイント
期末手当は、賞与としての性質を有するものであるところ、賞与が査定対象期間における労働に対する報償的な性質を有するにとどまらず、将来の労働への意欲向上や将来の貢献への期待という要素を併せ持つものであること、企業においては多数の従業員に対する賞与の支給事務を迅速かつ画一的に行う必要があることなどを踏まえると、…
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