半田労基署長事件(名古屋高判平29・2・23) 残業85時間で過労死、持病も複数あり業務外? 睡眠不足し100時間超の負荷
心疾患発症前の残業数は認定基準を満たさず、複数ある持病の影響も否定できないとして労災不支給とされた遺族が控訴した。二審は、うつ病による睡眠不足を理由に、85時間の残業は平均的労働者の100時間超に匹敵すると判断。発症の主要因は過重労働で、うつ病が基礎疾患か否かは相当因果関係の判断に影響を及ぼさないとした。深夜の飲酒等も日常生活の範囲内とした。
うつ病症状を考慮 主要因は過重労働
著者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者甲は、昭和49年生まれで、自動車輸送業務や自動車用品類の取付け業務等を営むT社に平成15年10月に入社、平成16年1月に正社員となった。業務内容としては輸出用自動車のオプション部品取付業務等に従事していた。
甲は、平成23年9月29日午前0時から同日午前4時頃に、自宅寝室内において冷たくなった状態でうつぶせに横たわっているところを発見されたが、致死性不整脈による心停止により死亡した。
甲の妻は、半田労基署長に対し、甲の死亡はT社における過重な業務に起因するとして、労災法に基づく遺族補償給付等の支給の申請をしたところ、不支給処分を受けたため、不支給処分取消しの訴えを提起した。
一審(名古屋地判平28・3・16)は、発症直前に異常な出来事に遭遇したこと、短期間のうち過重業務に従事したこと、長期間にわたり過重業務に従事したことのいずれも認めることはできず、その他、過重負荷をもたらす事情も見出し難いとして甲の妻の請求を棄却した。
本判決は、控訴審の判断である。本判決は、およそ以下のように判示して、甲の死亡につき、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準」(平22・5・7基発0507第3号)に達しないとしてなされた遺族補償給付等の不支給処分を認容した一審判決を取り消した。…
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