シュプリンガー・ジャパン事件(東京地判平29・7・3) 育児休業前に問題あったと復職拒否し退職勧奨 育休明けの解雇合理性なし ★
育休前の勤務態度を理由に復職を拒否し、退職勧奨したうえで8カ月後に解雇した。会社は弁護士らに注意や指導、軽い懲戒処分など段階を踏むよう助言を受ける一方で、職場内から不満が噴出し業務に支障が生じると主張するが、東京地裁は、解雇が法律上の根拠を欠くことを認識できたとして無効と判断。危険・損害が生じるおそれに関し具体的な裏付けもないとした。
段階的な処分必要 妊娠等と時期近接
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、英文の学術専門書籍、専門誌の出版および販売等を行う株式会社である。
甲は、平成18年10月に入社し、製作部のJEOチームに所属して、学術論文等の電子投稿査読システムの技術的なサポートを提供する業務に従事していた。
甲は、平成22年10月31日に第一子を出産した後、1回目の育児休業を取得して、平成23年7月から職場復帰し、休業取得前の業務に従事した。
C部長は、平成26年3月、甲に交付する注意書を起案した。そこには、①平成25年の目標設定文書の提出が約5カ月遅れ、注意を受けたにもかかわらず、平成26年の時も何度も督促を受けたが、優先順位が低いなどと述べて、その後提出された書類の一部は白紙であった、②出退勤時に挨拶をするルールを守るという行動にも出ていないことは著しい協調不良であるといった趣旨のものであった。しかし、甲に交付されなかった。
甲は、平成26年8月から休暇に入り、同年9月2日に第二子を出産した後、2回目の育児休業を取得した。休業直前の甲の給与は、年俸557万600円とされていた。
平成27年3月、甲が会社に対し、職場復帰の時期等の調整を申し入れたところ、会社の担当者らは、JEOチームの業務は甲を除いた7人で賄えており、復帰を希望するのであれば、インドの子会社に転籍するか、収入が大幅に下がる総務部のコンシェルジュ職に移るしかないなどと説明して、甲に対して、退職を勧奨し、同年4月分以降の給与は支払われたものの、就労を認めない状態が続いた。…
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