九州惣菜事件(福岡高判平29・9・7) 定年後は時給900円、業務減り相当とした一審は 60歳から月収75%減認めず
時給900円、1日6時間勤務での継続雇用を拒否して退職後、定年前の8割の賃金で地位確認を求めた事案。業務の範囲は定年前より限られ、時給額もパートと比べ不合理でないとした一審に対し、二審は、業務量の減少に伴い短時間勤務の提案に理由はあるが、月収「75%減」を正当化する合理性は認められないと判断。受け入れ難い条件で不法行為として慰謝料を命じた。
受け入れ難い条件 合理的な理由なし
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は、被控訴人に雇用され定年となった。①主位的に、定年後も被控訴人との間の雇用契約関係が存在し、賃金を定年前の8割相当とする黙示的合意が成立しているとして労働契約上の地位確認を求め、②予備的に、被控訴人が再雇用契約について賃金が著しく低廉で不合理な労働条件の提示しか行わなかったことは、控訴人の再雇用の機会を侵害する不法行為であるとして、逸失利益・慰謝料等の支払いを求めた。一審(福岡地裁小倉支判平28・10・27)は、原告の請求を棄却し、原告が控訴した。
判決のポイント
控訴人は、平成27年3月31日をもって被控訴人を定年退職し、被控訴人が設けた継続雇用制度(高年法9条1項2号)に基づき、定年後の再雇用を希望したが、被控訴人が提示した再雇用の労働条件(本件提案)を控訴人が応諾していないから、控訴人と被控訴人との間において、具体的な労働条件を内容とする定年後の労働契約につき、明示的な合意が成立したものと認めることはできない。
同法…に基づく高年齢者雇用確保措置を講じる義務は、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件の雇用を義務付けるといった私法上の効力を有するものではないものの、その趣旨・内容に鑑みれば、…
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